『万引き家族』是枝裕和(2018)

日本映画

 

映画のあらすじと概要

<主な登場人物>

柴田治(夫)

柴田信代(妻)

柴田亜紀(信代の妹)

柴田祥太(息子)

りん、ゆり(娘)

柴田初枝(母)

 

柴田治は東京の下町に暮らしている。妻の信代とその妹の亜紀、息子の祥太と母の初枝と共に暮らしている。

ある日万引きを治と祥太でして帰って行く時、団地の廊下に少女がいるのに気づく。寒い中ひとり外にいるのをみかねてつれてかえってしまう。一度、信代と治でゆりを家に返しに行くが、家の中から諍いの声が聞こえ戻ってきてしまう。ゆりを風呂に入れると身体中にあざなどがあり虐待が疑われる。

治は工事現場での仕事に出かける。しかしその日足を負傷して帰ってくる。労災を期待するが、労災はおりなかった。祥太がテレビでりんがニュースで失踪事件として取り上げられているのを知り皆でテレビを見入る。ばれないためにりんの髪を切りりんは柴田家の新しい家族となる。

信代はクリーニング店で働いていたが、リストラの対象になってしまう。もう1人のリストラの対象になった同僚から退職しないとりんのことを言うぞと脅されクリーニング店を辞めることとなる。

亜紀は性風俗店で働いている。そこでは源氏名をさやかと名乗っている。四番さんと言う常連客がいる。

初枝は前夫の月命日にその息子の家に通っていた。そして帰り際に息子から慰謝料をもらっていた。亜紀はその家の子でその妹の名前がさやかだ。

ある夏の日に一家は海へ行く。本当の家族のように楽しい日だった。

その後自宅で初枝は死去する。独居老人となっている手前、病院へ電話するわけには行かず、家の下に埋めることとする。

祥太はりんを連れて駄菓子屋に行くが、そこの店主に妹には万引きはさせるなよと言われお菓子をもらう。

車上荒らしをやる治について行くが、疑問を感じあまり積極的には手伝わなくなる。

また駄菓子屋に行くと店は閉店していた。その後スーパーへ行くとりんが万引きをしようとする。慌ててそれから気をそらそうとするため店の缶類を倒し、グレープフルーツを持って店外に祥太が逃げ出す。店員に追われて、逃げ場を失い最後道路から高架下に飛び降りる。

祥太は病院へ入院し、治と信代は警察から事情を聞かれるが家に用事があると逃げる。その晩、一家は家から逃げようとするが家の前にいた警察に捕まる。

治たちは事情聴取を受ける。治と信代は過去に殺人事件を犯していたことや、祥太は治と信代が連れてきたこと、初枝と治は実際の親子ではないこと、治というのは実名ではないことなどが明らかとなる。

信代が罪を引き受け刑に服し、治は一人暮らしとなり、祥太は保護施設に行き、ゆりは元の家族に戻された。

祥太は治と一緒に信代に面会に行き、そこでどこで拾われてきたかを言われ本気で探せば親が見つかるかもと言われる。その余祥太は治に家に泊まることにする。僕を置いて逃げようとしたのと言われ治はそれを認めこれからはただのおじさんでいるよという。翌日、バスに乗って帰る祥太を送りに行く。バスが発車すると治は必死にバスを追いかける。正太は振り向き波か囁く。

ゆりは元の家族に戻ったが母親からひどい扱いを受ける。また外の廊下で1人で遊んでいるとその外を眺める。

映画の感想

ストーリーやテーマについて

是枝裕和監督の作品でカンヌでパルム・ドールを受賞した作品。もともとは『声に出して呼んで』というタイトルだった。

血縁関係がない一家が万引きや年金詐欺などで生活しているが、まるで本当の家族のように和気藹々としている。一方血の繋がった本当の家族でも子供や妻を虐待していたり、一見理想的な家族に見えても中身は空疎な関係性だったり、血が繋がってるだけで家族と言っていいのだろうかという疑問を投げかける。

演出や脚本について

これまでの是枝作品通りドキュメンタリータッチの演出となっている。

基本的に大人のキャストには台本を持たせ、子供には台本を持たせない。

舞台となった家はセットではなくて実際にあった空き家を使ったそうである。

脚本は母親が死んだ後もその年金を使って生活をしていた家族の事件が元になっているそうである。

キャラクター&キャストについて

この映画が樹木希林にとっての遺作となった。

安藤さくらはカンヌで賞をとった。その演技は特に最後の事情聴取のシーンがすごく良かった。ほぼアドリブで是枝監督による質問に答えていく形で撮影されている。

リリー・フランキーの演技はいつも安定していてうまいと思う。今回も情けない万引きするしかできることがない父親役が嵌っていた。

子役の使い方が上手いのはいうまでもない。

まとめ

家族とはなんなのかを深く考えさせられる作品だった。

万引きという点でつながっている家族という異常な関係だが、食事のシーンや海のシーンなど「ふつう」の家族と何も変わりなく幸せそうに見えた。しかしその幸せは長くは続かなく、あっという間に崩れてしまう。

経済的に豊かで形式的な外見的には幸せそうな家族、DVや虐待をしている家族、治は繋がっていないがそこへたどり着いて集まってしまった家族、どのような家族が本当に幸せなのだろうか。

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