映画のあらすじと概要
広島に住む浦野すずは絵を描くのが得意な少女だった。いつも空想に浸っており、市内にお使いに行った時のことも漫画と話にして妹に聞かせる。化け物の人攫いの籠に入れられそこで少年と一緒になる。それが周作だった。
一家で祖母の家を訪ねた時、昼寝をしていると天井裏から少女が降りてきて食べ残ったスイカを食べていた。先生には座敷童だろうと言われる。
小学校での図画の時間、自分の絵を描き終わって帰宅したすずは同級生の水原哲がまだ絵を描かずに海を眺めているのにでくわす。彼の代わりに絵を描いてやる。
数年後、18歳のすずは祖母の家で海苔作りの手伝いをしていると、近所の人が慌てて縁談の話があり相手が家に来ているからすぐに帰りなさいと言われる。帰ってみると呉から来た北條周作という青年が来ていた。翌年結婚する。義父母と小姑の黒村径子と姪の晴美との生活が始まる。戦時下の食糧難の中庭に咲く草花や少ない配給品を工夫して食事を作ったり、径子に怒られながらもみんなの笑いの器になるように生活していく。
ある日砂糖を水の中に落としてしまい義母のお金で闇市で砂糖を買ってくることになる。帰り道で道に迷い遊郭に入ってしまう。そこでリンに帰り道を教えてもらう。
空襲が激しくなり、義父が入院していることを知りそこの病院を晴美と尋ねたおり空襲に遭ってしまう。防空壕の中で避難するが、空襲が病んだのち外を歩いていると時限爆弾に遭遇し、晴美と鈴の右腕を亡くしてしまう。
すずは放心状態になり、径子からは責められる。
焼夷弾が降ってきた夜、それを体を張って消すすず。鈴の中で何かが変わっていく。妹が訪ねてきて、お祭りのある8月6日には広島に帰ってくればいいのにと言われ帰ることにする。しかし当日になって医者にも行かなくてはならず、結局行くのをやめる。そのことを径子に告げる。すると物凄い閃光とその後揺れが起きた。
広島に原子爆弾が落とされたのだ。
ソ連侵攻もあり15日には玉音放送があり終戦となる。しかしすずはここに5人もいるのになぜ最後まで戦わないと憤る。畑のある裏の丘に登ると太極旗が見える。自分の食べていたものや信じていたものが暴力だったことを知る。
広島に周作といると孤児が寄ってきた。なつくので呉に連れて帰ることにする。シラミだらけだった彼女を風呂に入れる。そうして鈴と北條家の戦後の生活が始まっていく。
映画の感想
ストーリーやテーマについて
すずの成長を通して絶望と不条理の中どう生きていくのかを見つけていく内容となっており、反戦映画というより現代社会への批評性が強く出ているように思う。
ただ単に戦争反対というのではなく当時の人々、世界の片すもに生きる人々を描くことで幸福のあり方や、人の生き方などを上手く描いていると思われる。
前半はすずはただ周りに流されて生きているだけだったが、晴美と右手をなくしてからは能動的に生きていこうとするように変化する。また自分の信じていたことが暴力によって支えられていたことに戦争に負けることで気づき泣き崩れるシーンは迫力と説得力があり心が揺さぶられる。
演出や脚本について
監督は最初制作の資金が集まらず、自分の貯金を切り崩していたそうだ。そのため映画の中に出てくるような切り詰めた食生活をしいられたという。
空襲に対する砲撃が黄色や赤や青などカラフルで絵具で絵を描いているようにする演出が面白い。砲撃の弾は区別するために実際そのような色なのだそうだ。
また、何度も広島まで通って取材、インタビューを重ねて忠実に当時の広島や呉を再現しているのがすごい。
キャラクター&キャストについて
のんを主役の声優にしたのが何よりもすごいことだと思う。すずのイメージとぴったりと合っている。
ドラマ版では他の女優さんが演じているがのんの演技で見たかった。
まとめ
今までにない観点に立った戦争を描いた映画だと思う。
前半では戦争中の日常も楽しく感じてしまう。
是非こうの史代さんの原作も読んでいただきたい映画です。
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